『あなたがた信仰する者たちよ、アッラーを畏れ、(言行の)誠実な者と一緒にいなさい』

(クルアーン第9章119節)




 ナフジュル・バラーガ Nafj Al−Balagahah
   ---イマーム・アリー・イブン・アブー・ターリブの説教、書簡、格言集 ---




説教207 

アミール・アル=ムウミニーンの仲裁〈注1〉に関しての態度に
教友が不快感を示したときの言葉  


おお、皆の者よ、わたしとあなた方とのことは、戦いであなた方が疲れきってしまうまではわたしの望んだとおりに運んでいた。アッラーにかけて。あなた方の中には戦いに圧倒され、他の者を見捨てた者がいる。戦いはあなた方の敵を完全に弱めた。昨日までわたしは命令を下していたが、今日はわたしが命令されている。昨日までわたしは人びとに(悪行しないように)説得していたが、今日はわたしが説得されている。今、あなた方はこの世に住むのが好きだということを示した。あなた方が嫌うことをあなた方にさせるのはわたしにふさわしくない。



〈注1〉 なんとか切り抜けていたシリア軍は力を失い、戦場から逃げる用意が出来ていた頃、
ムアーウィヤはクルアーンを戦略の道具に利用して戦いの局面を完全に変え、イラク軍を分裂させることに成功した。アミール・アル=ムウミニーンは忠告に努めたが、従者には前進の構えはなく、停戦を主張した。それでアミール・アル=ムウミニーンも仲裁に同意せねばならなかった。この人びとの中には、この調停でクルアーンに従うとの申し出に騙されて信じた人たちと、長期にわたる戦いで疲れきってしまい、自信を失っていた人たちとがいた。人びとにとっては戦いを停止させる良い機会だった。それで彼らは声をからして戦いの延期を求めた。
アミール・アル=ムウミニーンの従者の中には、一時的な権威とみなして従っただけで、心底から彼を支援していない人たちがいた。彼らはアミール・アル=ムウミニーンの勝利を目指していたのでもなかった。ムアーウィヤに期待する人たちもおり、彼らはこの調停でムアーウィヤに希望を託していた。また、最初からムアーウィヤと密かに協力していた人たちもいた。
このような状況下の、このような軍隊がここまでの段階に戦いを運ぶことが出来たのは、アミール・アル=ムウミニーンに政治能力と軍司令官としての才能があったからだった。ムアーウィヤがこのような策略を講じていなければ、アミール・アル=ムウミニーンは疑いなく勝利を手にしていたはずだった。というのもシリア軍の勢力は尽きていて、打倒はもうその首まで近づいていたからである。これに関連してイブン・アビー・アル=ハディドはこのように記している。

マーリク・アル=アシュタルがムアーウィヤに接近して彼の首をつかんだ。シリア軍の全勢力は粉々にされた。殺されたとかげの残された尾が左右にぴくぴくと動き続けるように、わずかな動きを識別できるだけであった。 (ナフジュル・バラーガ11巻30‐31頁)




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