『あなたがた信仰する者たちよ、アッラーを畏れ、(言行の)誠実な者と一緒にいなさい』

(クルアーン第9章119節)




 ナフジュル・バラーガ Nafj Al−Balagahah
   ---イマーム・アリー・イブン・アブー・ターリブの説教、書簡、格言集 ---




説教108 

アッラーの偉力 



凡てのものがかれに服従し、凡てのものはかれに依り存在する。
かれはあらゆる貧者の満足、卑しき者の自尊心、弱者のための精力、
抑圧された者の避難所である。
話している者が誰であろうとかれは聞いておられる。
無言でいる者が誰であろうとかれは秘密を知っておられる。
生命あるすべての人の暮らしはかれに依る。
死ぬ者は皆、かれの御許に戻るのである。

おお、アッラーよ! 
眼は貴方を認識するために見ていないのに貴方の創造を描写する者の前に在られる。
被造物は貴方が孤独なので創造されたのではない。益を得るために創られたのでもない。
貴方に捕らえられた者は貴方より遠くには行けず、貴方から逃げられない。
貴方に不服従な者は貴方の権限を減らすことはできない。
貴方に服従する者が貴方の偉力に付け加えることはない。
貴方の判定に異議ある者はそれを覆すことはできない。
貴方の命令にそっぽを向く者は、貴方なしではできない。
貴方の前にあるすべての秘密は開かれており、あらゆる不在は現れている。

貴方は永遠の御方であり終わりがない。
貴方は最も高い目的であり、貴方からは逃げられない。
貴方からの釈放はなく貴方に向かうしかない、約束された戻る場所なのである。
貴方の御手はあらゆる被造物の前髪であり、凡ての生命体が帰するのは貴方である。
貴方に栄光あれ! 我々が目にする貴方の被造物はなんと偉大であろうか。
だが貴方の偉力の傍ではその偉大さはなんとつつましいことか。
我々が認識する貴方の領域はなんと畏怖の念を起こさせるものであろうか。
だが貴方の権限によって我々に隠されていることに比べるとなんと慎ましやかであろうか。
この世の貴方の恩恵はなんと多大であろうか。
だが来世の恩恵に比べればなんとささやかであろか。




同じ説教より
天使に関して


おお、アッラーよ、貴方の天空に住む天使を創造して、地上のずっと上に置かれた。
天使は貴方とその全被造物について最も知識があり、貴方を最も畏れ、貴方の一番近くに
いる。天使は生殖器に留まったことがなく、子宮の中で保たれたこともない。
彼らは「いやしい水(精液)から(聖クルアーン32章8節、77章20節)」創造されたのではなかった。 彼らは時の変動で散らばったのではなかった。
彼らは貴方の近くの、(卓越した)場所に
置かれている。彼らの欲望は貴方に集中する。
貴方への彼らの信仰は非常に深く、命令を軽視することは全くない。
貴方に関して隠されたことを彼らが目撃するなら、彼らは自分たちの行為が極めて取るに足りないものだとみなし、自身を批判し、信仰されるべき貴方の権限に従って信仰しなかったことを認識し、また服従されるべき貴方の権限に服従しなかったことを認識する。




アッラーの恩恵と導き、それに感謝しない者たち


アッラーに栄光あれ。創造主であり被造物の善き試練のために信仰される御方に。
貴方は(天国の)家を創造し、その中で祝宴、飲み物、食べ物、配偶者、召使、場所、小川、
農園、果実を御与えになった。それから使徒を遣わせてそこに向かうよう招待させた。
だが、人びとはその呼びかけに応じなかった。貴方が説得されたことに納得しなかった。
彼らが熱望するよう御望みになったことに、彼らは熱心ではなかった。
彼らは(現世の)死骸に飛びかかり、それを食べて恥辱を稼ぎ、それを愛することで統一した。

人が何かの物を愛するとき、それは彼に縛りついて動かなくなり、心を病気にさせる。
彼は見ているが病んだ目で見、聞いているが聾の耳で聞いている。
欲望が彼の知性をばらばらにし、心は渇望するのにこの世界が彼の心臓を止めて死なせた。 その結果、彼は奴隷となり、分かち合う者たちの一員となる。それが向きを変えれば、彼も
その方を向き、それが前に進めば、彼もその方に進む。
彼はアッラー(への服従)をやめる者に思いとどまらされたのではない。
いかなる説教者の忠告も受け容れない。
彼は怠慢に陥った人びとを見るのだが、そこからの撤回や逆戻りはない。




死に関して


彼らが無視していることが彼らの上に降りかかっている。
彼らが安全でいられる、現世との別れが彼らにやって来た。
彼らは約束されていた来世に到達した。
彼らの上に降りかかることを描写することはできない。
死の激痛と現世を失う悲しみが彼らを包囲した。
その結果、彼らの体はけだるく、肌の色は変わった。
そして死は彼らの闘いを増す。

彼は目で見ながら、自分の耳で聞きながら、その機知と知性で人びとに嘘を言ったが、
彼と彼の話す力の間に何者かが立っている。そのとき、彼は自分の人生をいかに無駄に
したか、何をして時間をつぶしたかを熟考する。彼は自分が盲目になり、公正に、また不正に
集めた富を思い出す。今、その必然の結果が彼を襲う。彼はそれを置いて去る。
彼の後に残された人びとのためにそれは残る。残された人びとはそれを享受し、益を得る。

他者にとっては容易な取得であるが、彼の背には重荷がのしかかる。
彼はそれを取り除くことができない。
彼が死ぬ時、自分の行いについて開示され、彼は恥を感じて歯で己の手を噛む。
生きていた間にむやみに欲しいと思ったことを彼は好まないであろう。
そのことで彼は自分ではなく、彼のことを羨ましがった人が富をためこんでいたのだったらよかったのにと思う。

死は彼の耳が舌のようになるまで(機能を失うまで)彼の体を襲い続ける。
だから彼は人びとに嘘を言うが、彼の舌が話すのでも彼の耳が聞いているのでもない。
彼は彼らの顔をかわるがわる見つめ、彼らの舌が動くのを見る。
だが、彼らの話す声はもう聞こえない。
そして死の揺さぶりが増し、死が彼の視力と耳を奪い、魂が体から離れていく。
そして彼は人びとの前で死骸となる。人びとは寂しくおもいながら彼の許から離れていく。
彼は悲しんでいる人びとに加わることはできず、(彼を)呼ぶ人に応じることができない。
人びとが彼を大地の小さな場所に運び、そこで彼は自身の行いに直面する。
そして人びとは彼の弔問をあきらめた。




審判の日に関して


命令されて記録されたことがその終焉に近付くまで、物事はその定められた限界を完了し、
後方は前方と結びつき、被造物は復活というかたちでアッラーの御意思にあるようになる。
そのとき、かれは天空を激しく震動させて分裂させる。大地を揺らして地震を起こす。
山々を根こそぎにしてばら撒く。アッラーへの畏怖でそれらがぶつかり合い、かれを畏れる。

その中にいるすべての人間を取り出す。彼らが尽き果てばらばらになった後で召集し、
よみがえらせる。それから、かれは彼らの隠れた行いについて問うために彼らを引き離す。
彼らはふたつのグループに分かれる。報酬を得る者と懲罰を受ける者とに。
忠実な人びとに関しては、かれは彼らを御許に引き寄せて報酬を与え、かれの家に永遠に
住まわせる。そこに定住した人びとはそこから離れない。彼らの位置に変化はなく、恐怖で
圧倒されることがなく、病が降りかかることもなく、危険にさらされることもなく、場所から場所に移動を迫られることもない。

罪を犯した人びとに関しては、かれは彼らを最悪の場に置かれる。そして彼らの手と首を縛り、足と前髪を縛り、タールの服を着せ、炎の衣を着せる。過酷な熱さで彼らは処罰され、その囚われ者に扉は閉まる。火の中から大声で叫ぶ声が聞こえ、燃え上がる炎に恐怖の声をあげる。囚われ者はそこから脱出できない。彼らは償いによって解放されることはなく、足かせを切除することはできない。この家には定められた年数はなく、消滅するかもしれず、またそれには寿命がないので消え去ることもない。




同じ説教より
聖預言者に関して


彼はこの世に見向きもせず、低きものとみなした。彼はそれをさげすみ嫌った。
彼はアッラーの御意思でそれから離され、恥辱というやり方で他の者たちにそれを広げられたのだということを認識した。 従って、彼は心底それから離れ、思い出すのを頭から追い払った。そこの衣服を得ることがないようにそれの魅力が自分の目から隠れ続けるように願った。
彼はアッラーからの(罪を犯さないという)誓約を運び、警告者として(神の懲罰を)彼の民に
忠告し、吉報の運び手として人びとに天国を求めるよう呼びかけた。




聖預言者の子孫に関して


我々は預言者の木であり、神の使徒の場所に留まる。そこは天使が降り、智の宝庫であり、
叡智の源である。我々の支持者で我々を愛する者には慈悲が待っており、我々の敵で我々を嫌う者には神罰が待っている。




00889.gif(1103 byte)  説教109









Designed by CSS.Design Sample