『あなたがた信仰する者たちよ、アッラーを畏れ、(言行の)誠実な者と一緒にいなさい』

(クルアーン第9章119節)




 ナフジュル・バラーガ Nafj Al−Balagahah
   ---イマーム・アリー・イブン・アブー・ターリブの説教、書簡、格言集 ---




説教161 

教友の一人(バヌ・アサド出身)から「あなたはこの地位(カリフ)に最も値するのに、
あなたの部族(クライシュ)がそれを奪ったのはどういうことですか?」と尋ねられて、
アミール・アル=ムウミニーンが返答した。 


おお、バヌ・アサドの兄弟よ! あなたの腹帯が緩んで誤った表現をされたが、あなたは義理縁者であり、問う権利がある。 問うなら聞きなさい。我々が抑圧されていることでは、我々は
血筋においては最も高く、神の使徒との関係においては最も強い。
それ(カリフの地位)に無関心だった人たちもいたが、人びとの心は貪欲になり、身勝手な行為をした。仲裁者は我々が審判の日に帰る御方、アッラーである。

困惑させるこの話はもういい。あらゆる非難の叫びを放った話は。〈注〉

アブー・スフヤーン(ムアーウィヤ)の息子を見よ。泣いた後で時がわたしを笑わせてくれる。
当然である。アッラーにかけて。あらゆる驚きを通り越して、不正を増大させたこの出来事は
何であろう。この人たちはアッラーの灯火を消そうとした。かれの噴水をその源から封じようとした。わたしと彼らの間に伝染病を生む水を混ぜた。我々から困難の試練が取り除かれたのなら、わたしは真実の進路へ彼らを連れて行くのだが。

だからかれらのために嘆いて、あなたの身を損なってはならない。 (聖クルアーン35章8節)


〈注〉有名なアラブの詩人イムリウ・ル・カイス・アル=キンディーの詩からの半行。
二番目の詩はこう続く。

      あの駱駝がどうなったかは教えてくれ。

この詩の背景であるが、イムリウ・ル・カイスの父親フジュル・イブン・アル=ハーリスが殺されて、その復讐に彼がアラビアの部族に呼びかけてまわっていた時のことだった。
彼はジャジーラ族の男のところに滞在していたのだが、身の危険を感じたので離れ、
ハリード・イブン・サドゥース・アッ・ナブハーニーの家に宿泊していた。
その間に、ジャジーラ族のバーイス・イブン・フワイスに駱駝を乗り逃げされたので、イムリウ・ル・カイスはハリードに苦情を言い、駱駝を取り返すのと引き換えに雌駱駝をやってくれないかと頼んだ。
ハリードは彼らのところに出かけて行き、自分の客から盗んだ駱駝を返すよう訴えた。
しかし、彼らはハリードの保護下にある客ではないだろうと反論したので、ハリードが自分の
客であると誓って言った。そして連れてきた雌駱駝をみせた。彼らは駱駝を返すことを約束したが、実際にはそうしないでハリードが連れてきた駱駝も追い払ってしまった。
別の言い伝えによれば、返してもらった駱駝をハリードがイムリウ・ル・カイスに渡さないで自分のものにしたので、これを知って「盗まれた駱駝のことはもういい。だが、わたしの手から盗んだ雌駱駝については言ってくれ」という意味のことを詠ったのがこの詩であった。
アミール・アル=ムウミニーンがこの詩を用いたのは、「ムアーウィヤとは戦争状態だが、自分の権利を略奪した人たちに荒らされたことは過ぎ去ったことなのでもう話さなくてよい。今は起きている災難のみと格闘する時である」ということを言いたかったからだった。
というのも、この教友に問われたのはスィッフィーンの戦いが起きている時だったからである。




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