『あなたがた信仰する者たちよ、アッラーを畏れ、(言行の)誠実な者と一緒にいなさい』

(クルアーン第9章119節)




 ナフジュル・バラーガ Nafj Al−Balagahah
   ---イマーム・アリー・イブン・アブー・ターリブの説教、書簡、格言集 ---




説教92 

ハワーリジュ、害を広めるウマイヤ家の消滅について
および彼の知識の広さ〈注〉  




アッラーに称賛あれ。おお、皆の者よ、わたしは反乱者の目を取り出した。その陰鬱がふくれあがり、狂気が高まったとき、それに近づけるのはわたし以外にはいない。わたしがいなくなって寂しがる前に、わたしに問いなさい。我が命をその手に握られたアッラーにかけて。今から審判の日までに、わたしに何でも尋ねなさい。大勢の人びとを先導する一団と、大勢を誤り導く一団について問うなら、誰がその行進を呼びかけ、誰が先頭に立ち、誰が後ろで駆り立て、ここでその動物に乗る者がどこで休憩し、最終的に留まる場所がどこで、その中の誰が殺され、誰が自然死するかをあなた方に話そう。

わたしが死んだら、困難な状況と悲しみの出来事があなた方の上に降りかかるだろう。
質問する立場の大勢の人びとは視線を落として無言のままでいる。質問に応じる立場の人びとは自信を失う。これは戦いがあなた方の上に降りかかり、あらゆる困難がやってくる時のことである。過酷な日々なので、あなた方は毎日が長く感じられるであろう。だが、アッラーはあなた方の中で高潔であり続ける者に勝利を御与えになる。

害悪がやって来ると、彼らは正義と悪事を混乱させ、悪が消えると、警告を忘れる。接近してくるときは彼らが誰かわからないが、戻ってくる時には識別される。彼らは風が吹くように一撃し、いくつかの市を攻撃し、別の市は攻撃できない。

わたしの見解において、あなた方にとって最悪の害はバヌ・ウマイヤの引き起こす害悪である。それは盲目で暗黒を生じさせる。その影響力は一般的なものだが、特定の人びとには悪影響となる。その状態の中で明瞭な眼を保つ者は悲しみに悩まされるが、盲目のままでいる者は苦しみを避ける。アッラーにかけて、わたしの後でバヌ・ウマイヤはあなた方にとって最悪の一族であることを知るだろう。まるで、噛んだり、前肢でたたいたり、後肢で蹴ったり、乳を絞られるのを拒んだりする、手に負えぬ雌駱駝のようであることを。彼らは自分たちに都合のよい人と自分たちを害さない人のみが残るまであなた方を支配する。彼らが引き起こす災難は、奴隷が主に助けを求めるように、もしくは、従者が指導者に助けを求めるように、あなた方が彼らに助けを求めるまで継続する。

悪の目の恐怖のように、イスラーム以前の破片のように、彼らの害はやって来る。そこには導きの光塔も救済の印もみられない。我々アフルルバイト(預言者の家の人びと)は、この害悪から解放されている。我々は害悪を引き起こす一人ではない。この後、アッラーが体から皮をはがすように、あなた方からそれを追い払われる。かれによって彼らは卑しめられ、首をつかんで引きずられ、耐え難い苦痛で満たされたコップで飲まされ、彼らには剣のほかには何も施されず、服もあてがわれず、恐怖しかない。そのとき、クライシュはこの世のすべてを引き換えに、たった一度でよいから、一頭の駱駝を殺す瞬間でよいから、今、わたしが彼らに求めているほんの一部をわたしが彼らから受け容れるように、わたしを見つけたいと願うであろう。わたしが求めているのはほんの一部なのに、彼らはそれをくれない。


〈注〉これはナフラワーンの戦いの後でなされた説教である。説教の中の害悪とは、バスラ、スィッフィーン、ナフラワーンの戦いを意味する。というのも、これらの戦いの性質は預言者の戦いとは異質なものだったからである。預言者の戦いでは、敵は不信人者だったが、ここでの対決相手はイスラームのベールで顔を覆った人びとだった。従って民衆は、礼拝を呼びかける人びととなぜ戦わなければならないのかと言ってムスリムを敵にする戦いに躊躇した。それでフザイマ・イブン・サービト・アル=アンサリーは、アンマール・イブン・ヤースィルが殉教するまでスィッフィーンの戦いに加わらず、対決相手が反乱者であることを認めなかった。
同様に、「予言された10人」の中のタルハやアッ・ズバイルといったバスラでアーイシャ側にいた教友、ナフラワーンでの額に礼拝の印があるハワーリジュ、彼らの信仰と礼拝が混乱を生じさせていた。このような状況下、勇敢に戦おうと立ち上がった人びとだけが、彼らの心の中の秘密や信仰心の実態に気付いていた。アミール・アル=ムウミニーンを対決に立ち上がらせ、聖預言者の言葉を証言したのは、彼の特別な鋭い認識力だった。

「わたしの後、あなた方は誓約を破った人たち(ジャマルの人びと、すなわち駱駝の戦い)と戦うことになるだろう」(アル=ハーキム『ムスタドラク』3巻139頁。『アッ・ズ・ル・マンスール』6巻、18頁。『アル=イスティハーブ』3巻1117頁。『カンズ・アル=ウムマル』6巻、72、82、155、319、391、392頁、8巻、215頁。その他)




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