『あなたがた信仰する者たちよ、アッラーを畏れ、(言行の)誠実な者と一緒にいなさい』

(クルアーン第9章119節)




 ナフジュル・バラーガ Nafj Al−Balagahah
   ---イマーム・アリー・イブン・アブー・ターリブの説教、書簡、格言集 ---




説教27

聖戦の勧告〈注〉


誠にジハードは天国の扉の一つで、アッラーがその最高の友に開いた扉である。
それは敬虔さという衣服でありアッラーの鎧でありアッラーの信頼する盾である。アッラーはこれを放棄する者を恥辱という服、災いという衣で覆いになる。その者は侮辱と軽蔑で蹴り飛ばされ、心は(怠慢の)帳に覆われる。ジハードを見逃したために、彼の許からは真実が取り上げられる。屈辱に苦しまねばならず、正義は与えられない。

用心せよ! 夜も昼も、陰でも日向でも(密かでも公然でも)この人たちと戦うようわたしはしつこくあなた方に呼びかけた。襲撃される前に攻めるよう勧告してきた。アッラーにかけて、誰も家の真ん中を攻められていないが屈辱に苦しんだからである。だが、あなた方は言い逃れをして他人任せにした。目の前で破壊されるまで放棄した。バヌ・ガーミド〈注〉の騎手がアル=アンバールに到達し、ハッサン・イブン・ハッサン・アル=バクリーを殺した。彼らは守備隊からあなた方の騎手を消した。

彼らは一人残らずムスリム女性とイスラーム庇護下の女性の家に押し入り、彼女らの足、腕、首、耳から装飾品を略奪した。女性たちにはこの節を唱えるしかなす術はなかった。「本当にわたしたちは、アッラーのもの。かれの御許にわたしたちは帰ります」(クルアーン2章156節)負傷者も死者も出さずに彼らは富を積んで戻って行った。このすべてが起きた後、悲しんで死んだムスリムは誰も非難されない。わたしに対して正当な理由がある。

なんと異様なことであろう! なんと奇妙なことであろう! アッラーにかけて、この人たちが不正で統一し、あなた方が公正でばらばらなのを見て、わたしの心は沈む。あなた方は矢の標的になった。あなた方は殺すのではなく殺される身にある。攻撃するのではなく攻撃される身にある。アッラーへの不服従に賛同したままでいる。夏に動くよう命じれば暑いといい、暑さが去るまで見逃してくれという。冬に行進を命じれば寒さが厳しいといい、寒気が去るまで待ってくれという。それは口実にすぎない。暑さや寒さで逃げるなら、アッラーにかけて、あなた方はもっと重大な戦いから逃げるのだろう。

ああ、あなた方はうわべだけの人で、人ではない。あなた方の知性は子供のそれであり理解力は天蓋に座る者(外界から隔離された女)のそれである。あなた方に会っていなければよかった。あなた方を知らなければよかった。アッラーにかけて。あなた方との関係は慙愧の念をもたらし、その結末は後悔であった。アッラーがあなた方を(敵にして)戦われますように! あなた方はわたしの心を嫌なもので充たせ、わたしの胸に激怒を載せた。口いっぱいの悲嘆を次から次へと飲ませた。わたしに従わず、わたしを置き去りにして忠告を台無しにしたので、アビー・ターリブの息子は勇猛だが戦術を知らない、とクライシュは口にするようになった。アッラーが彼らに恩恵を与えますように! 戦いでわたしより年長で激しく戦った人は彼らの中に一人でもいたのか? わたしは二十代でそこに昇進した。今、わたしは六十を超えるが、服従されない人に意見はない。




〈注〉スィッフィーンの戦いの後、ムアーウィヤの殺害と流血があちこちに広がり、アミール・アル=ムウミニーンの統治地域の都市を侵略し始めた。ヒート、アル=アンバール、アル=マダーインを攻め入るために、ムアーウィヤは六千人の兵士とスフヤーン・イブン・アウフ・アル=ガーミディーを派遣した。アル=マダーインに到達したが人影はなく、アル=アンバールに向かった。そこでアミール・アル=ムウミニーン側は五百人の駐屯兵を配置していた。
だがムアーウィヤのすさまじい軍隊に抵抗することはできなかった。わずか百人の兵士が残り勇敢に戦ったが、敵軍の激しい攻撃にもちこたえることはできなかった。駐屯兵の先頭にあったハッサン・イブン・ハッサン・アル=バクリーが三十人の兵士と共に殺された。敵は戦場に障害がなくなるとアル=アンバールを思うままに荒らし回り、町は完全に破壊された。
この知らせを受けてアミール・アル=ムウミニーンは説教台に登り、聖戦を呼びかけたが応じる声はどこにもなかった。懸念と嫌悪感を口にして説教台から降りた。これを見て人びとは罪の意識に駆られ自尊心を取り戻し、彼に従った。アミール・アル=ムウミニーンはアル=ヌハイラで停止した。従者は彼を囲んで、もう十分なので戻るように説き伏せた。考慮の余地のないほど彼らはそう言い張ったのでアミール・アル=ムウミニーンは同意して戻った。
サイード・イブン・カイス・アル=ハムダニーが八千人を率いて前進してきた。だが、スフヤーン・イブン・アウフ・アル=ガミディーが倒れてしまったので、サイードは戦わずに戻って来た。
イブン・アビー・ハディド版の報告によると、サイードがクーファに到達すると、アミール・アル=ムウミニーンはモスクに入ることを望まなくなるほど深い悲嘆に暮れていたので、自宅の廊下(モスクにつながる渡り廊下)に座りこんでこの説教を書き記し、奴隷サァドに民衆の前で読み上げるように渡した。アル=ムバッラド(アル=カーミル 1巻、104‐107頁)によるウバイドッラー・イブン・ハフス・アル=タイミー、イブン・アーイシャからの報告には、アミール・アル=ムウミニーンはアル=ヌハイラを早足で歩きながらこの説教をしたとある。イブン・マイサムもこの伝承を優先している。




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