『あなたがた信仰する者たちよ、アッラーを畏れ、(言行の)誠実な者と一緒にいなさい』

(クルアーン第9章119節)




 ナフジュル・バラーガ Nafj Al−Balagahah
   ---イマーム・アリー・イブン・アブー・ターリブの説教、書簡、格言集 ---




説教72

アミール・アル=ムウミニーンがマルワーン・イブン・アル=ハカム()についてバスラで語った言葉。マルワーン・イブン・アル=ハカムがジャマルの日に捕えられ、アミール・アル=ムウミニーンに執り成してくれるようにハサンとフセイン(彼らの上に平安あれ)に頼み、二人の執り成しで解放された。その時に二人が「おお、信者の司令官よ、彼はあなたに忠誠を誓うことを望んでいます」と言ったのに対して語った。  



彼はウスマーンが殺害された後でわたしに忠誠を誓ったのではなかったか? 今、わたしには彼の忠誠は必要ない。彼はユダヤ人の手である。彼がその手でわたしに忠誠を誓っても、すぐに破るだろう。彼が力を握るのは犬が鼻を舐める瞬間ほどである。彼は(同じく支配者となる)四匹の雄羊の父親である。人びとは彼とその息子たちのせいで苦難の日々に直面するだろう。



〈注〉マルワーン・イブン・アル=ハカムはウスマーンの甥だった。背が高く痩せていたので
「ハイッバティル」(悪事の糸)というあだ名で呼ばれていた。アブドル・マーリク・イブン・マルワーンがアムル・イブン・サイード・アル=アシュダクを殺したとき、彼の兄弟ヤフヤー・イブン・サーイドはこう言った。
「おお、ハイッバティルの息子よ、おまえはアムルを騙した。おまえのような者たちは嘘と欺瞞の上に(権威の)家を建てるのだ」

彼の父アル=ハカム・イブン・アビー・アル=アースはメッカ陥落の際にイスラームに帰依したが、彼の行いは預言者を非常に困らせるものであった。そのために預言者は彼とその子孫に「この男の子孫に災いあれ」と祈っていた。彼のさらなる陰謀を見た預言者はメディーナからワッジの丘(ターイフ)に追放し、マルワーンもこれに従った。この後、人びとは彼らが生涯メディーナ入りすることを許さなかった。アブー・バクルとウスマーンもそうしたが、ウスマーンはカリフ在位時代に彼らを呼び戻し、カリフの権威はマルワーンの手中にあるかのごとく彼を昇格させた。以後、マルワーンにとって好都合の状況となり、ムアーウィヤ・イブン・ヤジードの死後、ムスリムのカリフに在位した。しかし、その即位期間はわずか9か月18日で死がやって来た。息が止まるまで妻が枕を顔に当てるという死に様だった。

アミール・アル=ムウミニーンが述べた4人の息子とは、アブドル・マーリク・イブン・マルワーンの息子であるアル=ワリード、スライマーン、ヤジード、ヒシャームだった。彼らは次々とカリフの座に昇り、父親の経歴に色を添えた。解説者の中にはこれがマルワーンの息子のアブドル・マーリク、アブドル・アル=アズィーズ、ビシュル、ムハンマドと解釈する者もいた。アブドル・マーリクはカリフに即位したが、アブドル・アル=アズィーズはエジプト知事、ビシュラはイラク知事、ムハンマドはアル=ジャジーラ知事だった。




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