『あなたがた信仰する者たちよ、アッラーを畏れ、(言行の)誠実な者と一緒にいなさい』

(クルアーン第9章119節)




 ナフジュル・バラーガ Nafj Al−Balagahah
   ---イマーム・アリー・イブン・アブー・ターリブの説教、書簡、格言集 ---




説教35

調停後のアミール・アル=ムウミニーンの言葉〈注1〉


時は我々に厳しい苦難と重大事をもたらしたが、凡ての称賛はアッラーのもの。わたしは証言する。アッラーのほかに神はない。アッラーに配偶者はなく、かれに並ぶほかの神はない。ムハンマドはかれの僕、預言者である。(彼とその家族に神の祝福と平安あれ)

さて、経験のみならず知識を有する同情的な助言者の不服従が失望をもたらし、後悔に終った。この調停に関してわたしはあなた方に命令を下した。隠れた視界をあなた方の前に示した。カシールの忠告〈注2〉が受け容れられていたとしても、あなた方は、助言者本人が自身の助言に疑念を抱き、(彼の知性の)火打ち石が火を起こすことができなくなるまで、荒々しい敵や不服従の暴徒のようにそれ(我が命令)を拒否した。その結果、わたしの立場もあなた方の立場もハワーズィンの詩人が詠ったのと同じものになってしまった。

ムン・アラジール・リワーにて、そなたに命じたが、
翌日の正午まで、
そなたに我が助言の善はみえなかった。(遅すぎた)




〈注1〉 ムアーウィヤ軍が聖クルアーンの紙片を槍に掲げたとき、アミール・アル=ムウミニーンは言った。「皆の者よ、陰謀に騙されるな。彼らは敗北の屈辱から逃れたいがためにこのような策略をするのだ。わたしは彼ら一人ひとりの性格を知っている。彼らはクルアーンの従者でもなければ信仰につながった人びとでもない。我々が戦っている目的は、彼らがクルアーンに従って教えに基づいて行為させるためである。アッラーのために、このような陰謀に騙されてはならぬ。意を決し勇敢に前進せよ。停止するのは死にそうな敵を負かしてからにしなさい」しかしながら敵の策略は功を奏でた。人びとは不服従を選び、反抗した。(略)

和訳者注:詳細は『預言者の兄弟イマーム・アリー』25章(大陰謀の項)を参照されたい。

〈注2〉 助言者の忠告を拒否して後に後悔するはめになったときに使われる諺。
アル=ヒーラの支配者ジャジーマ・アル=アブラシュによりアル=ジャズィーラの支配者アムル・イブン・ザリブが殺されて、その娘ザッバーが後継者となった。即位後、父の復讐を企て、
ジャジーマに使いを送り、自分に政治は無理なので、後見人となって自分を妻に迎えて欲しいと伝えた。この提案にジャジーマは有頂天になり、千人の騎兵と共にアル=ジャズィーラに発つ準備を始めた。ジャジーマの奴隷カシールがこれは策略だと忠告するが、ジャジーマは理性を失い、自分が殺害した男の娘がなぜ自分を伴侶に選んだかの理由を考えてみることができなかった。こうしてアル=ジャズィーラの国境に達すると、ザッバーの軍隊が出迎えていたが、歓迎している様子がなく、カシールは再び疑惑を抱いてジャジーマに戻るよう忠告したのだが、
目指すものがすぐそこに近づいていたため、情熱に駆られて前進を続けた。彼は町に入ったとたんに殺された。これを目撃して、カシールが「カシールの忠告を聞いていたなら」と言った。
この時からの諺である。




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