『あなたがた信仰する者たちよ、アッラーを畏れ、(言行の)誠実な者と一緒にいなさい』

(クルアーン第9章119節)




 ナフジュル・バラーガ Nafj Al−Balagahah
   ---イマーム・アリー・イブン・アブー・ターリブの説教、書簡、格言集 ---




説教25

ムアーウィヤ軍の占拠〈注〉の知らせを受けたとき、アミール・アル=ムウミニーンの 部下ウバイドッラー・イブン・アッバースとサイード・イブン・ニムラーンが ブスル・イブン・アビー・アルタートに圧倒され撤退して戻って来たために、聖戦における彼の意見に無関心かつ弛んだ従者に
困惑していた。その後で説教台に立って言った。


わたしの手で保持できるクーファ以外に(わたしに残されたもの)は何もない。
おお、クーファ市民よ、これがあなた方の状態で旋風があなた方に吹き続けるならば、アッラーはあなた方を破壊するだろう。

この後、ある詩人の唱で説明した。

おお、アムルよ! そなたの善き父の命にかけて。 わたしはこの壷からほんの少しの油(空になった壷に付着する油)を手にした。

説教が続く。

 ズフルがイエメンを征服したとの知らせがあった。アッラーにかけてわたしは考えを巡らしている。悪事に団結してまもなく国全体を奪い取るであろう人びとと、(自身の権利で)統一しないあなた方のこと、離れていくあなた方のことを。正しいことでイマームに不服従するあなた方と、不正で指導者に服従する彼らのことを。支配者の信頼を守る彼らと、裏切るあなた方のことを。彼らの町での良い業績と、あなた方の損害を。あなた方に木の器を渡して任せたとしても、取っ手を握りしめて逃げ去るのだろう。

 おお、我がアッラーよ、彼らはわたしを憎悪し、わたしは彼らを憎悪する。彼らはわたしにうんざりし、わたしは彼らにうんざりする。彼らより良い人びとを代わりに与え給え。彼らにはわたしより悪い人を代わりに与え給え。おお、我がアッラーよ、塩が水に溶けるように彼らの心を溶かし給え。アッラーにかけて、(詩人の言葉のように)せめてわたしにバヌ・フィラース・イブン・ガンムの千の騎手がいたらよかった。

彼らを呼べば、騎手は夏の雲のように貴方の許にやって来る

(この後、アミール・アル=ムウミニーンは説教台から降りた。)




サイード・アル=ラディの言葉

この詩にある「アルミヤ」とは「ラミーイ」の複数形で雲を意味する。「ハミーン」は夏を意味する。詩人が「夏の雲」としたのは、夏は雲の動きが早く、水に欠くためである。雨をのせた雲はゆっくりと動く。一般にアラビアでは冬の季節にそうした雲が現れる。支援を求めればすぐに集まることのを示す表現。





〈注〉調停の後、ムアーウィヤは地位が安定したためにアミール・アル=ムウミニーンの都市を占有し、領土の拡大を考えるようになった。そこで市民の忠誠を確保するために様々な地域に軍隊を送った。ブスル・イブン・アビー・アルタートをヒジャーズに派遣し、ヒジャーズからイエメンにわたる何千人という罪なき人びとを殺害し、焼討ちで次々と部族を焼殺していった。子供も殺害された。イエメンの知事ウバイドッラー・イブン・アッバースの幼い息子二人も母ジュワイリーヤ・ビント・ハリード・イブン・カラズ・アル=キナーニーヤの目の前で虐殺されたほどだった。

 アミール・アル=ムウミニーンはこの虐殺の知らせに派遣部隊を送ることを考えていたのだが、絶え間のない戦いで民衆は疲れきっており、熱意をみせずに冷酷さを示すようになった。
戦いで人びとが義務を怠るのを目にして、この説教でアミール・アル=ムウミニーンは敵の不正と民衆の欠点を述べながら喚起し、自尊心を呼び戻させ、ジハードを呼びかけた。これで立ち上がったのはジャーリヤ・イブン・クダーマ・サァディで、アミール・アル=ムウミニーンの領土からズフルを追い払うために、二千人の兵士を率いて呼びかけに応じた。




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