『あなたがた信仰する者たちよ、アッラーを畏れ、（言行の）誠実な者と一緒にいなさい』

（クルアーン第９章１１９節）




　ナフジュル・バラーガ　Nafj Al−Balagahah
   ---イマーム･アリー･イブン・アブー・ターリブの説教、書簡、格言集 ---




説教44

マスカラ･イブン・フバイラ・アル＝シャイバーニー〈注〉はアミール･アル＝ムウミニーンから
バヌ・ナジヤの捕虜を買う約束をした後でムアーウィヤの許に逃げ、支払いを求めるとこれを避けてシリアに逃亡した。そのときの言葉。


アッラーがマスカラにとって有害になりますように。彼は高貴に振る舞ったが、奴隷のように逃げ去った。彼の崇拝者が（彼について）語る前に沈黙させた。彼の称賛者が彼の善行を証言する前に口を封じた。彼が逃げずにいれば、我々は彼が容易に支払えるだけを受け取って彼の金が増えるまで清算は待ったのだが。




〈注〉仲裁の後、ハワーリジュが立ち上がったとき、その一人でバニ・ナージヤ出身のアル＝ヒッリト・イブン・ラシード・アル＝ナジーが民衆の扇動に立ち上がり、一団を伴ってアル＝マダーインへ出発し、略奪と殺人を犯した。アミール･アル＝ムウミニーンはその調査にズィヤード・イブン・ハサファを３百人と共に派遣した。アル＝マダーインで対峙した二つの勢力が戦った。
衝突は一度あっただけで夜がきて停戦となった。朝がきてズィヤードの兵士がハワーリジュ五人の死体を発見するとともに彼らが退散したのに気付いたので、ズィヤードは一団を連れてバスラへ向かった。そこでハワーリジュはアフワーズに行ったことを知った。

だがズィヤードは軍勢が乏しいために前進をやめてアミール･アル＝ムウミニーンにそのことを告げると、彼はズィヤードを呼び戻してマッキル･イブン・カイス･アル＝リヤーヒーを２千人の経験ある戦闘員と共にアフワーズへ派遣した。マッキルの援助にバスラから２千人の剣士の派遣を要請する手紙をバスラ知事アブドッラー・イブン・アッバースに送った。その結果、バスラの隣人が加わって組織化され、攻撃の準備が整った。

しかし、アル＝ヒッリーが軍を連れてラムフルムズの丘にやって来たため、一団は丘の近くまで彼を追った。そして両勢力の戦いが開始した。そしてハワーリジュ３７０人が倒れ、生き残った兵士は逃げ出すという結果となった。マッキルが敵の退散を報告すると、アミール･アル＝ムウミニーンは彼らが再び頭を上げることがないよう追跡してその勢力を打ち砕くよう命じた。
マッキルは司令通りに追跡し、ペルシャ湾岸で追いついた。そこではアル＝ヒッリーが地元民や隣接民を説得して協力を求め、かなりの武力が準備されていた。到着したマッキルは和平の旗を掲げて、あちこちから加わっていた人びとには手を出さないので退散するよう宣告し、これが功をなして、人びとはアル＝リッヒーを見捨てて逃げた。

しかしアル＝リッヒーは彼らを呼び戻し、戦いを開始したのだが、バスラとクーファの勇猛な戦士の見事な剣で短時間のうちに反乱者１７０人が倒れた。
この時、アル＝リッヒーと対峙したアル＝ヌッマーン･イブン・スフバーン･アル＝ラシビーは倒れた。 まもなくして適は陣地を失い退散した。

この後、マッキルは野営地からすべての男女と子供を集まらせ、忠誠を誓ったムスリムは解放した。背信者にはイスラームに戻るよう求めた。キリスト教徒の老人一人を除いて、すべての人がイスラームを受け容れた。この老人は殺された。この後、マッキルは反乱に加わったナジヤ族のキリスト教徒とその家族を連れてアルダシール・フッラ（イランの都市）に到着した。
その地で捕虜になった彼らは、知事のマスカラ・イブン・フバイラ・アル＝シャイバーニーの前で泣き叫んで解放されるよう懇願したので、マスカラは捕虜を買いたいとズフル・イブン・アル＝ハーリスを介してマッキルに伝言した。マッキルは５０万ディルハムで捕虜を売ることに同意し、この金額を直ちにアミール･アル＝ムウミニーンに連絡した。最初の支払いを一括で送金した後で残りはまもなく送金すると伝えた。マッキルはアミール･アル＝ムウミニーンと面会した際にこの出来事を話した。アミール･アル＝ムウミニーンは取り決めを承認し、しばらくの間、支払いを待っていたのだが、マスカラは知らぬふりで沈黙していたので使者を送り、送金するか自分と面会するよう伝えた。それでクーファにやって来て２０万ディルハムのみを支払ったが、残りの支払いを避けてムアーウィヤの許へ逃げた。
ムアーウィヤはマスカラをタバラスターンの知事に就任させていた。

この説教はアミール･アル＝ムウミニーンがそのことを知ったときのものである。
内容を要約するとこうだ。「彼（マスカラ）が逃げずにいたなら、我々は支払いの要求を検討し、彼の財政状態が改善されるまで待ってやったのに、みせかけの行為の後で奴隷のように逃げ出した。彼の粘り強さをちょうど人びとが語り始めていたところだったのに民衆は彼の卑しさを語るようになってしまった」




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