『あなたがた信仰する者たちよ、アッラーを畏れ、(言行の)誠実な者と一緒にいなさい』

(クルアーン第9章119節)




 ナフジュル・バラーガ Nafj Al−Balagahah
   ---イマーム・アリー・イブン・アブー・ターリブの説教、書簡、格言集 ---




アミール・アル=ムウミニーン・アリー・イブン・アビー・ターリブの文書、
敵に宛てた書簡、知事に宛てた書簡、役人の任命書、家族と教友への指示


書簡63 

アミール・アル=ムウミニーンが自分に従ってジャマルの戦いに加わるようクーファ市民に
呼びかけていた時、クーファ知事アブー・ムーサー(アブドッラー・イブン・カイス)アル=アシュアリーは市民を思い留まらせていたことを知り、知事に宛てた手紙。  


アッラーの僕、アミール・アル=ムウミニーンより、
アブドッラー・イブン・カイスへ

わたしは知った。あなたが自分の不利になることも益になることも発言していたことを。〈注1〉
わたしの使者が到着したら覚悟して隠れ家から出なさい。そしてあなたに従う人々に呼びかけなさい。真実を確信するならば立ち上がれ。だが勇気がないのなら逃げてしまうがよい。
アッラーにかけて。あなたがどこに逃げようが捕まるであろう。完全にうろたえ、あなたのすべてが消散し、座席から振るい落とされるまで、容赦されないであろう。その時、背後を恐れるように目の前のことに恐怖する。

あなたが希望することは些細なことなのではない。深刻な災難なのだ。我々は災難という駱駝に乗って困難を克服し、(災難の)山々をなぎ倒さねばならない。正常心を保ってあなたの諸事をしっかりと握り、あなたの分け前を獲得しなさい。それが嫌なら、歓迎されない所、逃げきれない所へ行ってしまえ。一人に放っておかれて寝ていたほうがましだ。その後、誰もだれ某はどこかとは尋ねないであろう。アッラーにかけて。これが正当な権利を持つ者の権利である。
異端者の行為に我々は興味がない。この件に関しては以上である。



〈注1〉 〈注1〉アミール・アル=ムウミニーンはバスラ市民の反乱を鎮めようと考え、ウスマーンに任命されてクーファ知事に就任していたアブー・ムーサーにイマーム・アル=ハサンを介して手紙を送った。この書簡で知事の不誠実、矛盾する行為を叱責し、聖戦(ジハード)への呼びかけを試みたのは、知事が一方では真の導師(イマーム)はアミール・アル=ムウミニーンであり彼に忠誠の誓いを立てるのは正しいと言いながら、ムスリムを敵にして戦おうとする彼を支持するのは正しくないとも発言していたからである。このような危害を遠ざけるのは不可欠だった。アミール・アル=ムウミニーンは知事の矛盾した見解を「フワ・ラカ・ワッアライカ(自分の不利になることも益になることも)」と表現した。
すなわち、アミール・アル=ムウミニーンが正当なイマームであれば、なぜ彼を支持してその敵と戦うことが不当なのか。味方になり戦うことが不正行為というのであれば、正当なイマームとする主張に何の意味があるのか、ということを意味した。
ともかく、知事が思い留まらせていたにも関わらず、大勢のクーファ市民はアミール・アル=ムウミニーンを支持してその軍勢に加わり、バスラ市民を倒し、彼らが再び反乱することはなかった。




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