『あなたがた信仰する者たちよ、アッラーを畏れ、(言行の)誠実な者と一緒にいなさい』

(クルアーン第9章119節)




 ナフジュル・バラーガ Nafj Al−Balagahah
   ---イマーム・アリー・イブン・アブー・ターリブの説教、書簡、格言集 ---




アミール・アル=ムウミニーン・アリー・イブン・アビー・ターリブの文書、
敵に宛てた書簡、知事に宛てた書簡、役人の任命書、家族と教友への指示


書簡44 

ムアーウィヤがズィヤード・イブン・アビーフを騙して 自分との血縁関係に愛着をもたせるために手紙を書いたことを知った時にズィヤードに宛てた手紙 


ムアーウィヤがあなたの機知を惑わせ、鋭敏さを鈍らせようとして手紙を書いていることを知った。彼から自分を守りなさい。なぜなら彼は、不意に、前後から左右から、信ずる者を捕え、知性を弱めようとして接近してくる悪魔だからである。

ウマル・イブン・アル=ハッターブの時代に、アブー・スフヤーンは軽率な発言をしたことがあった。〈注1〉それは悪魔の悪質な提案だった。このような者とは血縁関係は成立しない。また後継者の資格もない。これを当てにする者は、酒宴に招かれざる客、或いは(鞍に)ぶらさがった杯のようなものである。

サイード・アル=ラディの言葉
ズィヤードはこの手紙を読んで「アッラーにかけて。彼は(真実を)証言された」と語ったが、このことを忘れなかったのは、ムアーウィヤが彼を自分の父親とつながる兄弟だと断言するまでだった。

アミール・アル=ムウミニーンの言葉「アル=ワーギル」は、一緒に飲むために酒宴の仲間入りをしていても、その一員ではないので、いつも立ち去るか追い出される、という意味。
「アン・ナウトゥッル・ムザバハブ」とは乗り手の鞍にぶらさがった木製の杯または椀のようなものが、動物が動くとぶらぶらと揺れることを示した。

〈注1〉 カリフ・ウマルはズィヤードをイエメンに派遣した。役目を果たして戻ってきた時、彼は集っていた人々に向けて発言した。その中にはアミール・アル=ムウミニーン、ウマル、アムル・イブン・アル=アース、アブー・スフヤーンがいた。これに感心したアムル・イブン・アル=アースが「なんと出来た男か! 彼がクライシュ族の出だったら、彼の指揮棒でアラビア全体を率いていただろうに」と言うと、アブー・スフヤーンが「彼はクライシュの者だ。わたしは彼の父親が誰か知っている」と言った。アムルが「誰なのか?」と問い返すと、アブー・スフヤーンは「それはわたしだ」と答えた。
決定的な歴史の証言もある。ズィヤードの母親スマイヤはアル=ハーリス・イブン・カルダフの奴隷で、ウバイドという名の奴隷と結婚し、アッ・ターイフのハーラトゥル・バガーヤで知られる住居で不道徳な暮らしをしていた。ふしだらな男たちが彼女の許に通っていた。アブー・スフヤーンもアブー・マリアム・アッ・サルーリーを介して彼女と通じたことがあった。
その結果、生まれたのがズィヤードだった。アミール・イブン・アル=アースがアブー・スフヤーンからこのことを聞いたとき、なぜそのことを公言しなかったのかと尋ねた。アブー・スフヤーンはウマルを指差し、彼を恐れたからだと答えた。彼は断固として公言しなかっただろうが、ムアーウィヤが権力を握ると、ズィヤードと文通するようになった。というのもムアーウィヤは知性があり狡猾な策略の専門家を必要としていたからである。この文通の情報を得たアミール・アル=ムウミニーンは、本書簡をズィヤードに送り、ムアーウィヤの罠にははまらないよう警告した。だが、彼はまんまと罠にはまり、ムアーウィヤに加わり、ムアーウィヤは彼のことを血縁の兄弟だと公言した。しかしながら、預言者はこのように宣言されていた。

子供は(合法の)夫に属し、姦夫は石打ちの刑に処する。




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